刀語 第十二話 「炎刀・銃」

終幕。


 一年、毎月1話60分という例のないスタイルで描かれ続けてきたTVアニメ「刀語」。自分も多くのユーザー同様、化物語から入った身なのだけれど、どちらから入っても、きっと後悔はしない。どちらも知らないまま過ごしていたことこそが、後悔なのだと思いました。独特の会話劇を見事に演じきるキャストのみなさん。そこに本来のアニメとしての意味もきちんと残そうと努力されていたスタッフのみなさん。数多あるアニメーションと同様、本当に大変な苦労の末生まれた作品と思います。

 それ故に、多くの人々に受け入れられたであろうし、認められたんじゃないかな。情報量一つだけ見ると、それは書籍の方が勝っていることなんて誰だって知ってる。そこをどう、作品世界を活かし、それでいてせっかく携わっているのだから、という思いだった込められていたんだと思う。もちろんそれらすべてがうまくいった、とも思ってはいないだろう。もっとこすれば、って考えがあったから、逆にここまで描けてきたのだとも思う。


 とがめ最期のシーン。鳥肌が立つほどに感情が注がれていて、そこに確かにキャラクターは生きて見えました。本当にこれまでの道程を思い返してしまった・・・

 そして尾張城へと乗り込んですべてを叩き壊し始めた七花。刀の破壊。己の破壊を許されてこそ、虚刀流は真の実力を発揮する。死を覚悟し、そこを死に場所と定めた彼の決意の言葉は、もうそれはすべてが残すべき相手のいない遺言。

 示しを付けるため、彼は現将軍を殺し、けれど世は何事もなかったかのように、ただただ継がれていってしまう。そんな終わり方でした。


 何もかも叶うほど、何をしてでも叶うほど、この世はうまく明るく、便利にはできていない。努力が報われないことが多く、精一杯伝えようとしても、一片も伝わらないことも多い。

 生きるため、生き抜くためのルールなんて存在はしない。

 こうすればよりよくなる。あの方法であれば夢に近づける。せいぜいその程度であって、「自分」が見いだせる未来、歩いていきたいそのさらに先の未来を、自分の思う通り進めたければ、それはすべて「自分」が見つけなければ、叶うことはゼロといってもいい。

 目的は確かに達せなければ意味がないといわれるかもしれない。
 夢は叶えなければ、意味がないといわれるかもしれない。

 結果がなければ、人は動かないかもしれない。

 それらを本当の意味で理解し、心に常に置いておくことこそが、まずは始まりであると。


 全11回。それをすべて網羅する今回。見事な構成であったと思います。伝えたいことも明確で、物語も明瞭で、キャラはいずれもユニークで。きっとおもしろい、と、思った作品がこうして期待以上に面白いと感じることができるこの喜びが、やはりアニメを見続けていってしまう(^_^;) 原点なのかもしれないです。本当に面白かった。

 また必ず西尾維新の作品には出会うであろうから、その時はまた期待してしまうだろうな。それでもきっと、上回ってはくれる、そんな思いを感じながら、見終わりました。ラストをみな実さんに戻してくれたことも、それだけでうるってきたw

 ほんとに1年。お疲れ様といいたいです。1つも見逃すことなく、きちんと見続けることができて良かった。見ることができてよかった作品です(^_^) またどこかで、一片を感じられるような作品があると嬉しいな。
 継がれていくのは確かなことで、最も望み信じたいことだから。

刀語 第十二話 炎刀・銃 (エントウ・ジュウ) (講談社BOX)
講談社
西尾 維新


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